2014年7月1日火曜日

「なまの世界」をしりえぬひとたち

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ぼくたちは、もうほとんど直接なにかをすることがない。それはしかたない。くつをはいたから、はだしであるくとけがをするようになってしまった。そういうことがかさなって、ぼくたちはいま、「なまの世界」(というものが想定できるとして)からはとてもとおい、間接的なところでくらしている。にくをたべるが、動物をしめころしたことがない。無人機をあやつって爆弾をおとしたことはあるが、つるぎをもってひとにおそいかかったことがない。

文明の「たかさ」は、たぶん、ぼくたちが「なまの世界」からどのぐらいとおくの、「たかい」ところまできたかということではかられるのかもしれない。

そして、たかいところへいけばいくほど、したでおこっていることがわからなくなる。政治の世界のマジョリティのひとたちはみな、社会のなかでもっとも「たかい」ところにいるひとたち、つまり、「なまの世界」からいちばんとおくの住人です。

いまも失言のおおいかつての総理大臣が、カップラーメンの値段もろくにしらなかったことで批判されたことがあった。そんなことは全然たいしたことない。問題は、首相や閣僚も、だれも原発の近所にすんでいないし、これからもすむことはなく、自衛隊が武力行使をするからといって、その部隊に参加することも(自衛隊員ではないので当然だけど)、まして前線にたつことなど絶対にないということ。

いたいし、こわいからいやなのだ、基本ぼくらは。それでも必要なものというのがあるのだ、というのなら、再稼働する原発周辺地区に首相官邸や再稼働推進派ご一行さまのニュータウンをおけないといけない。「そんな危険なことを」といまいいませんでしたか。まさか。原発は「安全が確認できたら再稼働する」のですよね。「安全」とは、有事の際に付近住民に被災者がでないことである。「すこしでるかもしれないが」ということは、民主国家ではゆるされない(これは説明しない)。被災者はでないはずだ、だから再稼働を推進し、その政策をすすめる首相は、そこにすめなければならない。そんなことをして「首相にもしものことがあったら」とだれかひとりでもいうひとがいたら、それは即刻問題発言になる。ほかのひとだったらいいのですか。いのちを天秤にかけていませんか。めっそうもない?それならすんでください、だから、あなたがあそこのすぐよこに。

武力行使もおなじだ。みみにあたらしい自民党の野田聖子のすこしまえの発言:「集団的自衛権が行使できる、武力行使ができるとなれば自衛隊は軍になる。軍隊は殺すことも殺されることもある。いまの日本に、どれだけそこに若者を行かせられるのでしょう」野田氏は行使そのものに反対しているわけではないとはいえ、この点についてはもっともである。にもかかわらず、以降も「ころす」「ころされる」ことを意識した議論が、結局なにもなされなかった。

武力行使になったら、安倍さんにもいってもらいましょう。いや、そんなことをいうのはやぶへびで、結構かれは気のりされるかもしれない。迷彩服とかきてよろこぶぐらいだから。いやいや安倍さん、指令隊長とかじゃないですよ。「前線」です「前線」。あなたがきめたことで、ここにたってドンパチやるひとがいるということです。いままでいなかったのに。それ、自分にはできないとゆってはだめですよ。ということで、集団的自衛権行使の記念すべき第1回では、安倍さんに前線にいっていただく。それができ(そうに)なければ、やってはいけない。「なまの世界」の当事者になる気がはなからないのだったら、そんなたかいところからいうのは、もうやめてほしいのです。いや、ほんとうにいい迷惑。

これは安倍さんには直接関係ないけれど、死刑制度もおなじです。森巣博がおなじようなことをいっていたけれど、死刑制度を支持するひとは、全員「裁判員制度」とおなじように「死刑執行員制度」の名簿に登録され、順番に執行にたちあわなければいけないことにする。これは全然過激なことではありません。過激なのは、この制度を支持することのほうです。自分では手をよごしたくないのに、この、いきている資格のないひとをころせということにまさるハイパー・ブルジョワジーはありうるでしょうか。

間接的な生をやめるのはそれでもむずかしい。でも、屠殺をみたことないけどパックのおにくをたべる、ぐらいのアマチュアの間接ライフをゆるしてもらうかわりに、人間のいのちがかかわる間接性からは、ぬけでないといけない。そうじゃないとずるいということになる。ひとがしぬかもしれない(原発・戦争)、ほんとにしぬ(死刑)ということがかかわることを支持するためには、それを直接の世界、「なまの世界」でひきうける覚悟がないといけない。そして、ほんとはもちろん、そんな覚悟をつける必要はまったくないのです。安倍さん以外は。

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